クロゴケグモに毒性はある?嚙まれた場合の危険性と対処法について
クロゴケグモは、光沢がある黒色で腹側に特徴的な模様を持つ小型のクモです。
強い毒を持っており、噛まれると激しく痛んだり、心拍数や血圧の上昇、麻痺などの症状が引き起こされる可能性があります。
もともと日本には生息していなかった種で、数十年前に国内で初めて発見されました。
2023年までの確認事例は3都県のみと非常に少ないですが、今後輸入資材に紛れて侵入し、分布が広がることも考えられます。
そこでこの記事では、クロゴケグモについて、その危険性や、危険にあった時の対処法、危険を防ぐための対策などを紹介します。
この記事を執筆した専門家
生物系大学院卒業後、自然環境系の建設コンサルタントに従事。
地理情報、自然環境や生物の生態等を専門とするほか、環境アセスメント図書作成の経験も有する生物環境分野の専門家。
クロゴケグモの基本情報
クロゴケグモは、毒を持つクモ(蜘蛛)の一種です。
体長はメスが1cm前後、オスはそれより小さく数mm程度と比較的小型のクモです。
メスの体色は光沢がある黒色が一般的ですが、個体によっては薄くて赤い模様が入る場合もあるようです。
外見上の一番の特徴は腹側に真っ赤な「砂時計模様」が入っていることです。
ただし、普段は地面に接している面なので目立たないため、実際に目撃した場合には「黒いクモ」という印象を受けるかもしれません。
オスの外見も黒色ですが、白やオレンジの点々がみられる場合があるようです。
動きは、比較的遅く、素早く動くことはほとんどありません。
一般的なクモと同じく巣を作り獲物を待つ習性があるため、地面を素早く動き回るようなことは基本的になく、作った巣でじっとしていることが多いようです。
食性も一般的なクモと同じく肉食性で、主に昆虫類を捕食します。
獲物が網に触れると素早く捕まえ、噛みつき毒を注入し、麻痺させてから食べます。
遭遇する地域や環境
クロゴケグモの本来の生息地は北アメリカだと考えられています。
日本では、2000年に山口県岩国市の米軍基地で発見されるなど山口県で複数回確認されているほか、滋賀県、東京都でも確認された事例があります。
ただし、同じヒメグモ科のセアカゴケグモやハイイロゴケグモと異なり、定着はしていません。
生息環境は比較的広く、人工的な環境も含めて様々な環境に適用しています。
日当たりが良く温かい隙間などに巣を作ることが多いようです。
先ほど説明した通り、地面を動き回るのではなく巣を作りじっとしています。
「ベンチや遊具の裏」、「ブラックやフェンス、プランター等の下」、「自販機やエアコンの室外機などの下や隙間」など、さまざまな環境に巣を作る可能性があります。
なお、クロゴケグモの巣は、不規則な形状の巣で、糸がごちゃごちゃと密集しているような形状です。
木の枝や天井等でよく見るタイプの規則的なパターンからなるクモの巣ではありません。
クロゴケグモの糸は、非常に強く、他のクモの数倍の強度があると言われています。
遭遇する時期や時間帯
クロゴケグモは夜行性で、夜間に活動します。
ただし、巣の中に潜んでいることが多く、活発に動き回ることは基本的にありません。
春から秋の暖かい時期に活発に活動します。
冬季には活動が少なくなりますが、温かい地域や室内であれば、他の季節と変わらない活動をします。
クロゴケグモの危険性
クロゴケグモの危険性は「噛みつかれること」です。
毒を持っており、噛みつくと毒を注入してきます。
なお、強い毒を持っているのはメスのみです。
毒は、同じヒメグモ科の毒グモであるセアカゴケグモよりも強力だと考えられています。
噛まれると、痛みや腫れが発生し、場合によっては、発汗、発熱や寒気、吐き気を感じたり、筋肉痛が発生することもあるようです。
また、心拍数や血圧が上昇したり、呼吸困難や部分的な麻痺などの症状が引き起こされる場合もあります。
これらの症状は長くても数日で治まるのが一般的です。
健康な成人の場合、命に係わるような重篤な症状が発生することはほとんど無いようですが、小児、高齢者、虚弱体質の人にとっては、重篤な症状が発生する可能性があります。
アメリカではクロゴケグモに噛まれた被害が1726件あり、そのうち55名が死亡したという報告もあるそうです。
このように噛まれると毒による被害を受ける危険性がありますが、攻撃的でなくおとなしい性格であるため、積極的に噛み付いてくるようなことはありません。
しかし、人工的な環境に巣を作ることも多いため、クロゴケグモが生息している地域では、たまたま手をついたところにクモの巣があり、不意に素手で触ってしまった場合などに噛まれる恐れがあります。
危険にさらされたときの対処法
クロゴケグモに噛まれた場合には、毒により強い痛みを感じます。
ただの切傷と違い、毒による症状であるため、対処法には注意が必要です。
噛まれた場合には、直ちに以下のような対処を行いましょう。
– 噛まれた場所をきれいな水や温水で良く洗う。
– 可能であれば石鹸水で洗浄したり、消毒しましょう。
– 洗浄後は、患部周辺を冷やします。
なお、出血があっても、止血やバンドエイドなどをせず、そのままにしておく方が良いとされています。
そうすることで、毒を体外に排出できる可能性があるためです。
また、圧迫により毒が周囲の組織に広がるのを防ぐことにもつながります。
そして、症状にかかわらず、できるだけ早く病院で診察を受ける必要があります。
その際には、可能であれば噛まれたクモを殺し、袋などに入れて病院に持っていくと、診断がスムーズになります
上で説明した通り、成人の場合、噛まれても命にかかわることはほとんどありません。
しかし、ごくまれにアナフィラキシー・ショックという急性のアレルギー反応が起こる場合があります。
アナフィラキシー・ショックになると、激しい蕁麻疹や、血圧の低下、失神などの重い症状が現れ、命にかかわる場合があります。
もし、このような症状が発生した場合は、救急車を呼び医療機関で対処してもらう必要があります。
危険を防ぐための対策
クロゴケグモの危険を防ぐための最も効果的な対策は「素手で触らないこと」です。
2023年時点では、日本での確認例は少なく、定着もしていません。
そのため、ほとんどの地域において、日常生活で出会う可能性は少ないと考えられます。
しかし、同じヒメグモ科の毒グモであるセアカゴケグモやハイイロゴケグモなどと同じく、輸入資材に紛れて、侵入してくる可能性はあります。
今後、クロゴケグモが侵入した場合、人工的な環境にも生息にも生息する可能性があります。
日常生活でも出会う可能性があり、例えば「庭仕事をしている時にクロゴケグモの巣を手で触ってしまった」ということがあり得ます。
もし、クロゴケグモが発見された場合、自治体から広報されたり、地域のニュースで扱われることが考えられます。
自分が生活している地域でクロゴケグモの生息情報があった場合には、情報をしっかりと収集し、クロゴケグモが生息してそうな場所は素手で触れないようにするなどの対策を行うと安心です。
国内におけるクロゴケグモの確認状況
日本国内におけるクロゴケグモの確認例は少ないです。
確認が報告されているのは、2023年時点で東京都、滋賀県、山口県の3都県のみになります。
滋賀県では、1995年に現在の米原市で確認されていて日本初記録となっています。
ただし、それ以降は確認報告が無く、定着もしていません。
また、東京都については、東京都のホームページで、都内で確認されたことが記載されていますが、具体的な情報は不明です。
ただし、定着はしておらず、継続的な確認報告はありません。
この中でクロゴケグモの確認が最も多いのは山口県です。
山口県内では、2000年に岩国市の米軍基地でクロゴケグモが初めて確認されました。
その後、毎年のように岩国基地で確認が報告されています。
さらに、2006年には基地の外でも発見され、その後も複数回基地外での確認が報告されています。
近年では、2020年に山口県防府市の中関港という港湾地区でクロゴケグモの可能性がある個体が発見されています。
まとめ
本記事では、クロゴケグモについて、その危険性や、危険を防ぐための対策などをまとめました。
説明した内容をまとめると以下の通りです。
– クロゴケグモは、セアカゴケグモよりも強い毒を持つ小型のクモ
– 光沢のある黒色をしており、腹側に特徴的な赤い模様を持っている
– 日本国内での確認例は3都県のみと少なく、定着もしていない
– 侵入した場合、人工的な環境にも巣を作る可能性がある
– 嚙まれると強い痛みを感じ、場合によっては全身に広がる
– ただし、積極的に攻撃されることは無い
クロゴケグモは、強い毒を持っており、噛まれると強い痛みや腫れなどの他、心拍数や血圧の上昇などの症状が出る可能性があり、危険です。
素手で触れることは絶対にやめましょう。
もし、クロゴケグモに噛まれた場合の対処法は「水で洗浄・消毒し、すぐに病院を受診すること」です。