日本のコウモリに危険性はある?注意すべき点と危険にさらされた時の対処法とは
コウモリは、自由に飛び回ることができる小型の哺乳類です。
日本国内では、都市部であっても、主に河川敷の周辺などで飛行している様子を確認することができます。
体長数センチの小動物サイズですが、病原菌に感染したり、衛生被害を引き起こす危険性があります。
そこでこの記事では、コウモリの危険性や、危険にあった時の対処法、危険を防ぐための対策などを紹介します。
この記事を執筆した専門家
生物系大学院卒業後、自然環境系の建設コンサルタントに従事。
地理情報、自然環境や生物の生態等を専門とするほか、環境アセスメント図書作成の経験も有する生物環境分野の専門家。
あわせて読みたい
コウモリの基本情報
コウモリは、小型の哺乳類で、完全な飛行能力があり、滑空するだけでなく鳥のように自由に飛び回ることができます。
鳥類の翼は羽毛に覆われていますが、コウモリの翼には羽毛がありません。
コウモリの翼は、手の指が非常に長くなり、その間に伸縮性のある膜が発達したような構造になっており、鳥の翼とは見た目がかなり異なります。
比較的大型になるオオコウモリというグループと、それ以外の小型のコウモリに分かれます。
日本国内では、オオコウモリは沖縄や小笠原諸島でのみ生息しており、全国で一般的にみられるのは後者の小型のコウモリです。
この記事でも、小型のコウモリを対象に説明いたします。
日本国内で見られるコウモリは、体長は数センチ、翼を広げたサイズも10~20センチ程度です。
素早く方向を変化させるような鳥とは雰囲気が異なる飛び方をしますが、意識せずに見た場合は鳥とは思うことが多いと思います。
一方、休息している場面は、鳥とは雰囲気がだいぶ異なります。
有名なので、イラストで見たり、話を聞いたことがある場合が多いと思いますが、逆さまにぶら下がり、翼で体を包み込むような形で休息します
コウモリは超音波で周囲の情報を得るという特徴的な性質を持っています。
顔の特定の器官から超音波を発信し、周辺の物体に当たり、反射してきた超音波を耳で受信します。
そして、反射してきた超音波の速度や周波数を読み取り、自分からどれくらい離れたところに、どのような物体が、どのような状態で存在しているかを認識します。
精度はかなり正確で、餌となる虫の形や場所を飛行しながら把握し、捕獲します。
このような習性により顔つきは普通の哺乳類とはかなり異なっています。
超音波を受信するため耳が非常に大きく発達している一方で、目の機能は退化しており、視力が非常に悪かったり、ほとんど見えなくなっています。
つまり、その結果、耳が大きく、目が小さい独特な顔つきになっています。
ただし、翼や顔以外の身体は、表面は茶色の毛で覆われており、ハムスターなどの小動物のようです。
なお、コウモリに「血を吸ってくる」イメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、血を吸う習性があるコウモリは少なく、国内には生息していません。
国内で生息していて、一般的に見かけることがあるコウモリは昆虫食です。
遭遇する地域や環境
コウモリは日本全国に生息しています。
日本国内に生息するコウモリは35種(文献により異なる場合がある)で、げっ歯類と並び、日本に生息する哺乳類の中で数が多いグループの一つです。
ただし、特定の離島のみなど生息している地域が限定される種が多かったり、森林内で生息して夜間にのみ活動していて、
昼間は洞窟や木に空いた大きな穴(樹洞)で休息している種が多いため、遭遇する機会は多くない種がほとんどです。
その中で、アブラコウモリというコウモリは、都市部においても適応しており、遭遇する機会が最も多いコウモリです。
アブラコウモリなど、国内で一般的にみられるコウモリは、春から秋にかけて活動し、冬は冬眠します。
ただし、気温によっては、冬眠する期間であっても、活動している事例もあるようです。
遭遇する時期や時間帯
コウモリは夜行性で、夕方から夜にかけて活動します。
日没後の薄暗くなったころから数時間が最も活発に活動する時間帯です。
また、都市部に生息しているコウモリは、活動していない時間帯であっても、休んでいる個体に遭遇する可能性があります。
山地部に生息するコウモリは洞窟や木にできた空洞等で休息しますが、都市部では、その代わりとなるとなるような場所、例えば、橋の下、ビルや住宅の薄暗い空間などを休息に利用します。
そのため、活動時間帯以外であっても、休息している個体に遭遇する可能性があります。
コウモリの危険性
コウモリの危険性は「危険な病原体に感染すること」と「衛生被害」の二つです。
「病原体に感染する危険性」については、あまり深刻に考えることは無いかもしれません。
このような危険性がある理由は、コウモリが、人間に感染する可能性のあるウイルスを体内に保有している可能性があるためです。
しかも、感染する可能性がある病気には、狂犬病やエボラ出血熱といった深刻な感染症が含まれます。
コウモリがこれらの感染症の原因となるウイルスの運び手になっている可能性があり、噛まれたり、触れたりすることで、感染する危険性があります。
しかし、実際のところ国内にはこのような危険な感染症が確認されていないため、国内に生息するコウモリが運び手になる可能性はほとんどないと考えられています。
ただし、未だ不明なことも多く、全く安全である確証はありません。
明らかにされていない危険なウイルスを保有している可能性があることも考えるべきです。
一方、「衛生被害」については、深刻です。
コウモリは、ノミやダニなどの寄生虫に寄生されている場合があります。
そして、これらは、人間にも同様に寄生し吸血する寄生虫です。
実際に、コウモリから、吸血性のダニが人に寄生する例が報告されています。
ダニに寄生された場合の症状はひどい痒みのみである場合が多いですが、ダニが保有するウイルスによる病気に感染する可能性もあるようです。
さらに、糞による被害も危険です。
コウモリの糞には、病原体や雑菌が多く含まれており、糞を介して、発熱や喘息などの健康被害が起きる可能性があり、重症化する場合もあります。
都市部に生息するコウモリは、住宅の屋根やベランダで休息することがあり、住宅の構造によっては屋根裏や住居内に侵入することも考えられます。
そのようなコウモリによって衛生面での被害が起こる可能性があります。
危険にさらされたときの対処法
上で説明した通り、コウモリは重い病気を引き起こすウイルスを持っている可能性があるだけでなく、衛生面でも被害を受ける可能性もあります。
そのため、コウモリに噛まれたらまず、傷口を徹底的に洗います。
そして、体調変化の有無にかかわらず、直ちに医療機関で診察を受ける必要があります。
衛生面の被害についても、何らかの症状が出ている場合には、すぐに病院に行きましょう。
風邪のように寝ていれば治るわけではなく、悪化していくことが考えられます。
診察では、コウモリが住居や住みついている状況などを忘れずに説明しましょう。
危険を防ぐための対策
コウモリの危険を防ぐための効果的な対策は「素手で触らないこと」と「専門業者に駆除を頼むこと」です。
「病原体に感染する危険性」を防ぐための対策は、「素手で触らないこと」です。
コウモリは、人が近づくと逃げていくようなおとなしい性格であるため、コウモリから攻撃してくることはありません。
しかし、直接つかむ等の危害を加えられた場合には、身を守るため噛みつかれる可能性があります。
噛まれたら重い病気に感染する恐れがあるため、絶対に素手で触ってはいけません。
休息しているコウモリに遭遇した場合には、むやみに捕まえたり手を伸ばしたりすることはやめて、離れたところから観察するようにしましょう。
また、「衛生被害」を防ぐためには、住居に住み着いている状況を確認したら自分で追い出すのではなく、専門業者に駆除を頼むのをおすすめします。
まとめ
本記事では、コウモリの危険性や、危険を防ぐための対策などをまとめました。
まとめると以下のような内容を説明いたしました。
– 噛まれると重い病気に感染する恐れがある
– 噛まれた場合は直ちに病院を受診する必要がある
– 住居内に住みついて衛生被害を引き起こす恐れがある
– 駆除は、専門業者に依頼するのが望ましい
小さく小動物のように可愛らしい生物です。
なので、発見したら思わず近づいたり触れたりしたくなるかもしれませんが、重い病気に感染する危険性があるので、絶対にやめましょう。
もし、コウモリに噛まれた場合の対処法は「傷口を徹底的に洗浄し、直ちに病院を受診すること」です。
また、コウモリによる衛生被害が考えられる場合の対処法は、「病院を受診し、原因となるコウモリを駆除すること」です。
あわせて読みたい